San Silvestro.

 何かしら理由を付けなければ会えない相手を、果たして恋人というのか、否か。
「うーん、人それぞれだろうし。そういう人たちもいるんじゃないかなぁ」
「本人達がそうだって思ってりゃ、そうなんじゃねぇの?」
「ありえねぇな。それはな、スモーキン・ボム」
 くすり、と笑った跳ね馬が、やけに懐かしい呼び名を口にする。
「恋人じゃなくて、恋してる相手、だ」

 久しぶりに飯でも食わないか、とディーノが誘ってきたのは、ファミリーやそれにまつわる仕事としての場ではなく、ごく親しい友人のための夕食の場だった。
 若くしてボンゴレを率いることになった沢田にとって、兄貴分であるディーノは頼れる存在であり目標とする人物でもある。マフィアといえども、その手綱を握る人間が代われば性質も変わる。かつては汚い名を欲しいままにしていたこともある組織だが、十代目への後継を目前にして悪名はすっかり鳴りを潜め、いまやボンゴレはマフィアらしからぬマフィアとして君臨していた。
 その土台を築いた九代目を爺さんと慕い尊敬し信頼された、十代目の憧れの対象である跳ね馬ことキャバッローネファミリー十代目ボス、ディーノは、真っ赤なワインが満たされたグラスを優雅に傾けながら、昔のままの顔で笑う。
「形は確かに人それぞれさ。けれど根本は同じはずだ。聞くが、好きでもない相手と長時間一緒にいれるか? 答えはノーだろ?」
 仕草だけは優雅なのに、器用なのか不器用なのか、白のクロスにソースの染みをいくつも作りながら、ディーノは食事と講釈を続ける。
「同じことさ。一緒に居たいと望む理由は好きだからだ。他に理由が必要なら、それは自分だけが側にいたいと願う、可愛い片恋、ってわけだ」
「ふーん」
 黙って話を聞いていたらしい山本は、なるほどなぁ、なんて当たり障りのない感想だ。
「相変わらずロマンチックというか、イタリアンな考えですね」
 苦笑気味の沢田は、最初に会った純粋なイタリア人が赤ん坊にして無数の愛人を持つかの家庭教師で、それに一途な我が義姉、女狂いの医者と恋愛に関してはかなり自由な考えをもった相手ばかりだったせいか、イタリア人はそういうものだ、という思い込みがあるらしい。いつだったか、獄寺くんはこの国に育った割に淡泊だよね、とさらりと言われ、面食らったことがある。
 彼の中では、イタリア人として異質なのは獄寺隼人のみで、大半はああなんだ、と決まっているのだろう。異質かどうかは判らないが、その自分の目からみて決してシャマル寄りの人間ではないだろうと思うディーノは、ぽかん、と目を見開いて、すぐに沢田と似たような苦笑いを浮かべた。
「ツナは手厳しいなぁ。けど、さほど間違っちゃいないという自信はあるぜ」
「獄寺くん」
 肩を竦めるディーノに同意を表すように頷いてみせてから、沢田がこちらを向く。はい、と顔を上げれば、やけに優しい顔をしたボスがいて。
「ディーノさんが言うのはもっともだよ。だけど、人には状況や事情というものがある。年を経れば余計に、ね」
「はい」
「子供だったあの頃とは違う。君は君のペースで恋人と付き合っていくのが大切じゃない?」
 もちろん、と悪戯っぽい笑みを浮かべた沢田が、度の弱いシャンパンが入ったグラスの口を向けてくる。ふわりと果実のような香がして、そういえば沢田は酒に強かっただろうか、と心配になった。
「獄寺くんが理由付けないと恋人を誘えないっていうなら、理由作りくらい協力するけど?」
「じっ……!?」
「お、そりゃいいな! なんだなんだ、相手は誰なんだ。俺も混ぜろっ」
「あれ、ディーノさん知らないんだっけ?」
「意外と鈍いからなぁ… ん? そんなに意外じゃないか。らしい、でしたね」
「ひでぇっ! 今のはひどいぞツナ!」
「はははっ。じゃあ獄寺くん、期待しててね」
「いや、十代目、あのですね……!」
「取り消せツナー!」
 アルコールの作用か、妙に上機嫌な沢田に言い繕う暇もなく、一流ホテルのスイートを貸し切った身内だけのディナータイムは、とうに三十を越したディーノの子供みたいな訴えへと話題が切り替わり。
 その後は延々とディーノと沢田による他愛もない言い争いが続き、やがて場はお開きとなった。

 それが、遡ること二月ほど前の話だ。
 季節は秋から冬に変わり、長いイタリア半島のなかでも南に位置するボンゴレ本部に遅い冬の風が吹き込む頃になっても、幹部一同は慌ただしく動き回っていた。今はまだ正式に引継ぎをされたわけではない十代目とその守護者たちも、それはそれで忙しく。
 クリスマスもなく走り回って気付けば暮れが迫り、そんな二月も前の話はすっかり忘れていた。沢田から急に呼び出されたのは、だから何か仕事のことだと信じて疑わず、その場に見慣れた黒い男がいたのも、その繋がりだと思っていたのに。
「十代目、と、雲雀? なんでここに」
 雲雀はどこにも属さない、彼自身が研究所という名のファミリーを背負うボスだ。稀に協力関係になることはあっても、こんな風に沢田の部屋にいることはほとんどないのに。
「それじゃあ雲雀さん。後はお願いします」
「ふん」
 にこやかな沢田とは逆に、不機嫌な鼻息で返事をした雲雀が、くるりと踵を返す。
「行くよ」
「へ? あの、十代目?」
「あとは雲雀さんに話してあるから。おつかれさま獄寺くん、よいお年を」
「お疲れさまでした… って、えー!?」
 雲雀に首根っ子を捕まれ、にこやかに手を振る沢田の部屋から連れ出される。扉が閉まる直前、なぜか笑顔というには悪戯めいたものを感じたが、問い質すことも出来ないまま扉がしめられた。
「なんなんだいったい」
「さあね」
 真後ろから声がする。襟首を絞められた苦しさが消え、改めて振り返ると、先程よりは機嫌が上昇したらしい雲雀が、ぱん、と手を払っている。
「さあって、お前に聞けって」
「僕は君を連れだすように言われただけだよ」
「は?」
「君が最近、気分が優れないようだから連れ出してくれってね。何か失敗でもしたの?」
「んなことっ」
 ここ暫らくは、血を流すような抗争もなかった。冬に入りはじめた頃から町はクリスマスムードで、それに便乗し悪さを企む奴らを一掃したのを最後に、あとはほとんどデスクワークだった。確かに腕が鈍ることを危惧したが、日課は欠かさなかったし、適度に発散していたからストレスもなく気分が優れないなんて感じもしなかった。失敗なんてありもしなかったのに、沢田はいったい何を。
「……あ」
 その時不意に、二月前の記憶が蘇ってきた。
 真っ赤なワイン、白のクロスについた染みや、向けられたシャンパンの芳香まで、鮮やかに。
 あの時沢田は、理由を作ってやる、と言っていた。会うための理由を作ると。ならあの笑顔は、会う場は作ったから後は自分でやれと、そういうことなのか。
「何?」
「あ、いや、その」
 耳聡く聞き止めた雲雀が胡散臭そうな顔をしている。
「お、お前、そういって十代目に呼ばれたのか?」
「そうだけど」
 だからどうした、と無言の黒瞳が言う。
「いや。よく、来たなって」
 雲雀は神出鬼没だ。いつどこに現れるか判らない。たとえば連絡がとれたからと言って、呼び出すのは簡単じゃない。
 それが、たかが気分が優れないから連れ出せと言われただけで来るなんて。
「沢田の用件はついでだよ」
 す、と雲雀の手が伸びてくる。襟首を捕まれ乱れた襟元にかかる指には見慣れない指輪が収まっていて、また新しいリングを見つけ出したんだ、と頭の端で思いながら、白い指先を見ていた。
「ついで?」
「そう」
 乱れたネクタイが解かれる。しゅる、と衣擦れの音がして、改めて首に回された。
「君に会いにきたら、そう言われた」
「……え?」
 器用にネクタイが結ばれていく。中学時代から馴染みのあるそれは、なければ姿が絞まらないような気がするくらい、あたりまえで。
 それと同じくらい、雲雀はなんでもないような顔で話を続けた。
「仕事の一つが片付いたから、寄ったんだ。そうしたら沢田に、君を連れだしてくれと言われただけだ」
「え、だって、なんで」
「何が?」
「会いにきた、とか」
 そんなこと、一度だって言ったこともしたこともないくせに。
「何? 僕が君に会いにくるのはそんなにおかしなこと?」
 不機嫌そうにしかめられた顔が目の前にある。
「僕は僕がしたいようにする。君に会いたいと思ったからそうした。沢田はついでだ」
 何度も強調し繰り返して、雲雀が手を離した。
「みっともない格好は嫌いなんじゃなかった? そんな格好じゃ風紀が乱れる」
「…テメェがやったんだろうが…」
 襟首を猫の仔の様に掴み上げたことなど忘れましたとばかりに懐かしい言葉を口にする雲雀に、軽く舌打ちをしながら言い返す。
 二月も前の話を、沢田が覚えているとは思わなかった。まして酒の席で交わされた口約束、一方的な宣言に近いような言葉を、その二月の間誰より一番忙しかったはずの沢田が忘れずにいたなんて誰が思うだろうか。
 そうだ。もう、六十日も前の話なのに。
 昨日のことみたいに思い出して、改めてかけられる言葉を自覚し赤面している自分が、一番信じられない。
「隼人?」
「っ、うるせぇっ。こっちこいっ」
 三度手が伸びてくる気配がして、慌ててその手を掴んで歩き出した。
「何所行くの」
「俺んとこだよっ。ここは十代目のお部屋の前だ」
「ああ、そういえば」
 今まで背にしていた立派な扉を振り返った雲雀が、忘れてたな、と呟くのを聞きながら、ただひたすら自室へと急いだ。
 二月前、クリスマスムードの広がり始めた街を通ったとき、すれ違った若い恋人同士の会話が耳に入った。内容は細切れにしか聞こえなかったが、クリスマス明けから新年にかけての予定を確認しているようなものだった。イタリアでクリスマスといえば家族で過ごすものだと相場は決まっている。恋人同士のイベントだと思っているのは日本人くらいのものだ。おそらく彼らも慣例に則り家族で聖夜を過ごし、その後再会出来る日を確かめていたのだろう。
 若いな、と思いながらも、思い出していたのはその日本人であるはずのコイビトだった。
 イベントごとにはことごとく興味の無い恋人のおかげで、日本滞在中からそんなものはこなしてきていない。クリスマスだからとケーキやチキンを囲んで二人で過ごす、なんてベタな事は自分も御免だったから助かったくらいだが、そんな地域限定のイベントごとですら一緒に居なかった自分たちは、一体どうやってあの時間を過ごしてきていたのだろう。
 待ち合わせるでもなく、落ち合うでもなく。時間が重なれば一緒に居て、そうでなければ理由が無い限り呼び出したりしない。偶然だけが二人を引き合わせていた、幼いあの頃を、俺たちはどうやって過ごしていたのか。
 扉が見えてくる。自分ひとりの部屋だ。与えられた個室は広く、かつて時間を過ごしていた中学の応接室よりよほど立派だ。
「へえ、なかなかいい場所だ」
 初めて部屋に足を踏み入れる雲雀の感想を背中に聞きながら、鍵を下ろす。
「…くそっ」
 違ったんだ。気づいてた。
 あの時の考えは間違っていた。偶然なんかじゃない、ちゃんと仕組まれて用意された時間の中で、二人で居たんだ。用意周到な、雲雀の計画の中で。
 何も言わない雲雀に甘えて、自分だけが気づかないふりをして、偶然だと思い込んでいた。
「隼人?」
「…なんで来んだよ、畜生」
「僕がくると困ることでもあるの」
 言葉に険が含まれる。ちょっとでも言葉遣いを誤れば、雲雀は即座に攻撃してくるだろう。
「困る」
「どうして」
「俺が、誘おうと思ってたのに、全部パァにしちまいやがった」
 クリスマスでも誕生日でも年越しでも何でもいい。とにかく、なにかの理由にすがって誘ってみたかった。
 けれど、一度としてそんな言葉を掛けた事の無い自分を、雲雀がどう思っているのか。誘ったとして、もし応じてくれなかったら。それを思うと、怖さで動けなくて。その弱さが、アルコールで刺激されて口に出てしまった、二月前。
 結局また、沢田に手助けされ、雲雀に先を越されてしまった。
「…馬鹿だな」
 ふ、とため息を吐いたのが聞こえる。
「うるせぇ、どうせ馬鹿だ」
「子供みたいな物言いだ。いい加減成長しなよ」
 呆れたような口ぶりなのに、言葉なのに、肩に触れてくる雲雀の手は優しい。
「赤ん坊じゃないんだから、思いは口に出して言うべきだ。僕は態度を悟ってやるほど優しくないよ」
 肩に触れ抱き込んだ腕が、きつく絡みつく。
 数ヶ月ぶりに近づく体温が生々しくて、ぎゅ、と目を閉じた。
「うそだ」
「何が」
「お前は…」
 結局、何もかも悟ってしまう。態度や言葉だけで、こちらが何を思い考えているかを察して、こうして態度に移してくる。
 だから気づかないふりをして居たかったんだ。
 それが、あんまりに心地よかったから。
「隼人?」
 ディーノのあの言葉は、きっとそんな自分を見透かしていたんだろう。
 相手に甘えてばかりで一歩踏み出すことも出来ない、いつまでも子供な自分。懐かしいあだ名は、その意味をも含んでいたに違いない。独りよがりの疑問はさぞ滑稽だったろうに、馬鹿にせず、笑みを浮かべていた鳶色の瞳を思い出して、すぐに打ち消した。
「…なんでもねぇ。それより」
 目を閉じたまま、白い首筋に擦り寄る。触れ合うことで余計に強く感じる互いの熱は、賭けてもいいくらい、こちらの方が高い。だから雲雀は悟ってしまうだろう。熱の高さと、思いの丈に。
「今締めたばかりなんだけど」
 ふう、と今日何度目か判らない溜息が、開けて随分たつピアスに掠めて、思いがけず肩が跳ねた。
「何、が」
「ネクタイ」
 君のね、と笑みを含んだ声が近づく。
 甘えるのはこれが最後だ。折りしも今日は大晦日、何も言わないでいる恋人に甘える自分は、今年に置いていく。来年から、改めて恋人同士となるために。
 ゆっくりと触れるそれは暖かくて、今更だと怒られるかもしれない、なんてことを考えながら、再び解かれていくネクタイの音を聞いていた。


「俺としてはいつでも部下には健全な精神でいて欲しいんです」
 にこにことうそ臭いほどの笑顔で出迎えた沢田は、開口一番、そう言い放った。
「…何の話?」
「いえ、実はですね」
 中学生の時分ならば確実に震え上がるだろう声にも、いまやファミリーの次期ボスたる沢田は反応すらせずに、つらつらと話を始めた。
 さかのぼること数ヶ月前。かつての家庭教師に呼ばれて出向いた夕食の席で、獄寺が急に話題に出したこと。それは、実名こそ挙げられていなかったか、自分と獄寺の話だったのだそうだ。
「俺は獄寺君の事を信用してますし、信頼してます。だから、彼の望むことは出来れば叶えてあげたい。けれど、雲雀さんに強要することは出来ません」
 怖いですから、と付け加えられた言葉が空々しい。
「ですので、俺が出来るのはこれだけです」
 沢田が腕を上げ、腕時計に指を当てる。ぴぴ、と小さな音がして、それっきり何も起きない。傍目には時間を確認したようにも、時間を合わせたようにも見える仕草だった。
「これは最近ジャンニーニに依頼して作らせたもので、現在試用段階のものです。ボタン一つで獄寺君や山本、笹川のお兄さんに連絡がつくようになっていまして。出来れば範囲を世界に広げたいんですが、今はまだ本部限定です」
「衛星でも打ち上げるつもりかい」
「ああ、それいいですね」
 ぽん、と両手を打つ。
「その意見、頂きます… で、今、獄寺君をここに呼びました。暫くしたら顔を出すはずですから、それまでに考えておいてください」
「何を」
「獄寺君を年明けまで拘束する方法を」
 相変わらずにこにこと笑いながら、沢田は何も特別なことは無いと話を続けた。
「本部もそろそろ年末休暇です。と言っても、マフィアなんて自由業ですから、そう長く確保はしてあげられませんけどね。今日を含めて四日程度なら我侭がききます。その間に、獄寺君と恋人らしいことでもして過ごしてあげてください」
「……どうして、君にそんな指図をされなきゃいけない」
「指図じゃありませんよ」
 かたん、と音を立てて沢田が立ち上がる。
 まだ身長なんて全然追いついてこない元後輩は、それでも真後ろから射す西日の所為で、いつもよりは大きく感じる。
「俺はお願いをしているだけです。俺がしているのは、お願いと、獄寺君をここに呼んだだけ」
 窓に映りこむ西側の空に、雲が広がる。
 太陽がかげり、うっすらと見える沢田の顔は、昔の顔で笑っていた。
「俺は、獄寺君が大切です。でも、雲雀さんだって大切です」
「僕?」
「はい。同じように山本やお兄さん、骸、クロームも、できれば皆を守りたいと思う。けれど出来ることは意外と少なくて」
 ふふ、という笑い声に、真後ろから聞こえるノックが重なる。獄寺がたどり着いたようだ。
「これがせめて、貴方達に対して俺が出来る唯一のことです」
 さらりと早口で言ったあと、すぐに入室を促す言葉に切り替わる。失礼します、と折り目正しく入ってきた獄寺は、一番最初に沢田を見て、その直近くに居る自分に気づいて目を丸くした。
 本当にこの子は馬鹿だ。
 こんなにも誰かの事を気遣い、誰かのために行動する。研究所の部下が知ったら卒倒するだろう様なことを、この子だけにしているのに、当の本人は何も気づかずにそんなくだらないことで考え込むなんて。
 あまつさえ酒の席でそれを口にし、上司を同僚をと巻き込んでいたなんて。
「…馬鹿馬鹿しい」
 今日だって、折角早くはけた仕事の後始末を部下に押し付けて、もう何ヶ月も会っていなかった恋人に会いに来たというのに、軽はずみな言葉の所為で沢田にこれ幸いと漬け込まれる形になったのだ。元々そのつもりでここを訪れた自分の意志は、どれだけの言葉を尽くして説明したとしても、彼の中で比重の重い沢田の言に傾き信じようとしないことなど、火を見るより明らかだというのに。
 本当に馬鹿馬鹿しい。そんなことは、疑い誰かに意見を問う前に、直接本人に言うべきだ。
 一から十まで、全ての手段を使って、体にも心にも教え込んでやるから。
「それじゃあ雲雀さん、後はお願いします」
 にこやかな沢田に鼻を鳴らし、獄寺の首根っこを捕まえて部屋を出る。
「獄寺君」
 部屋を出る直前、呼びかけてくる沢田の声は、イタズラが成功した子供のようなものだった。
「よいお年を」

年末話。相変わらずツナが黒くてごめんなさい。